マラソンなどアスリートにとってVO2maxは持久力を示す重要な指標です。まず練習を作る上で理解しておくべき知識や、具体的な練習方法等を徹底解説します!
最大酸素摂取量(VO2max)とは
最大酸素摂取量、通称「VO2max」といい
- Volume(量)
- O2(酸素)
- maximum(最大値)
の略で、その名の通り一定時間にどれだけの量の酸素の取り込めるかを数値化したものです。
これは有酸素能力(≒持久力)を示す1つの指標で、持久系のアスリートは特に非常に高い傾向にあり、
ランニング時にVO2maxを超えると、これ以上酸素を取り込んで活用できない状態になり、一定時間を過ぎると同じ運動強度を継続できなくなり、この状態がVO2maxに到達している状態です。
一般人の平均は40ml/kg/分、トップ選手は約80~90ml/kg/分ほどあると言われています。
VO2maxを正確に調べるには専用の施設に行き測定する必要がありますが、継続して変化を測らない限り把握する必要性はありません。
一般的なジョギングなどのトレーニングによってもVO2maxを鍛えることができますが、VO2max向上の効果を最大限狙った練習はかなり高強度なメニューになります。
実はVO2maxは25歳あたりがピークと言われており、それ以降は減少傾向にあります。
ですが、タイムを伸ばす要素はVO2maxだけではありません。
VO2max強化へのアプローチ方法
一般的に、VO2maxは有酸素能力を鍛えておけば、普段の数値から一定期間集中してトレーニングすることで仕上げることが可能です。
練習の強度を○%VO2maxで表すことがありますが、100%VO2maxは最大11分間継続できるとされており、それに近いペースで練習を行うことが重要です。
ですが、一番重要なのが有酸素能力の基礎を作り上げていることで、本番に向けVO2max強化に専念する期間を1〜2ヶ月間設けると良いとされています。
しかし大会前以外にVO2maxを鍛える練習が一切必要ない訳ではありません。重要度を落としながらも適度に取り入れましょう。
また個人の適正によって変化します。例えばジョギングなどで長い距離を余裕持って走れるのに中強度の練習になるとこなせない方は、VO2maxが低いことや、ランングエコノミーが低いことが考えられます。
他にも大会の種目によっても重要度は変化します。中距離種目や特に5000mなどがVO2maxがとても重要になります。課題を考えながら個人の適正に合わせて頻度等を調整して行いましょう。
効率の良い強化方法とは
VO2max強化の方法として次のような方法が挙げられます。
インターバルトレーニング
休息と疾走を繰り返すインターバルですが、その中でもVO2max強化に特化した
- VO2maxインターバル
- ダニエルズ式I(インターバル)トレーニング
を紹介します。練習の目的としてはVO2maxに到達した状態で刺激時間を稼ぐことで、上記の2つは同じ練習だと認識して大丈夫です。
今回は、こちらのVO2maxインターバルトレーニングを中心に解説します。
タバタトレーニング
タバタトレーニングは20秒の運動と10秒の休息を8セット行うメニューで、VO2maxに到達する強度で運動する事によりVO2maxを高めることが期待されます。
また全力に近い無酸素運動と、その回復に有酸素運動機構を刺激することで両方を鍛えることができます。
バイクトレーニング
VO2max強化へ最大限効率良く行うにはバイクトレーニング(機器)がおすすめです。負荷は筋力にもよりますが、自分が追い込める負荷で、全力で行うことが大切です。
この練習に関しては、追い込むだけ効果があると認識してかまいません。ペダルの高さを適切にし、膝に負荷がかからないよう気をつけましょう。
サーキットトレーニング
ジャンプ系種目や腕立て、スクワットなどの補強トレーニングを素早く行うことです。これによりVO2maxを刺激することができます。バイクトレーニングに比べVO2maxに対しては効果が劣りますが、全身をの筋肉を使うことで筋力トレーニングにもなり、脂肪燃焼効果も高まります。
補強トレーニングはランニングエコノミーの改善だけでなく、怪我予防にもつながるので、練習後などにタイマーを設定して行ってみることをおすすめします。
VO2maxインターバルの解説
練習の目的としてはVO2maxに到達した状態で刺激時間を稼ぐことです。
トレーニングを理解する上でVO2は、どれだけ息が上がっているかを表す数値だと考えれば分かりやすいと思います。
つまり、VO2maxは最大限息が上がっている状態です。
VO2maxインターバルは3000m~5000mのペースで行うインターバルです。先ほど述べた最大11分行うことのできるペースを分割して行うことで負荷を減らしつつ、刺激時間を確保することできます。
安静状態からVO2maxに到達するまで長くて2分ほど時間がかかるため、ダニエルズでは3~5分の疾走を繰り返すことを推奨しています。
ですが、2本目からはVO2が上昇している状態から始まるためVO2maxに到達するまで時間が短くなります。休息するほどVO2maxは下がるため、休息を短くすれば疾走時間が短くてもVO2maxの刺激を増やすことができます。
VO2maxインターバルの実践方法
ペース
ペースは3000m~5000mのペースで行うことが一般的です。
ペースがわからない方はVDOTで自己ベストから推定する方法があります。
(trainingのintervalが該当するペースになります。mとmiの違いに気をつけてください!)
心拍数に関しては、練習の最も高い数値が最大心拍数になる程で、限界近くかなり追い込む練習となります。
ですが厳密にペースを決める必要はなく、レースで10~12分持続できそうなきついペースでインターバルを行う事も効果があると推奨されています。
メニュー
先ほど述べたように、3~5分の運動を継続するインターバルです。
日本では、
- 1000×5(間200mジョグ)
- 400×12(間100~200mジョグ)
が有名で、特に1000m5本のメニューは、5000mのトレーニングとしても浸透しています。
ですがダニエルズ式では、一本の質を高めるために200mではなく400mのレストを推奨しています。
さらに、距離に関しても10kmか週間最大距離の8%以内の短い方が上限と表記されており、練習を積んでいる方なら距離を増やして刺激時間を増やすことができます。ですが怪我のリスクと質の低下が懸念されるため、無理しないようにしましょう。
頻度
一般的な練習の場合、1~2週間に1回入れられることが多いです。ですが基本的に頻度はVO2maxの能力や時期によってかなり変わってきます。
普段
普段は5000mをメインとしている人の場合週に1回はが理想だと思います。それ以外の種目の場合、重要度が下がっていくので、他の重要な練習を増やし、VO2maxインターバルは2~3週間に1度で十分だと思います。
中距離やマラソンといった重要度が少し低い種目の場合でも、VO2maxが低いことが明確な場合や、そのペースで練習した方が感覚が良くなるなど各個人によって変わるので、それに合わせて調整することが大切です。
試合前(1~2ヶ月前)
試合前は、VO2max能力を仕上げることが重要になってくるので、頻度を増やすことをお勧めします。
特に5000mに関しては、メインのポイント練習になるので多くて週に2~3回入れても良く、残りはジョグといった練習内容になります。
中距離に関しては、中距離のポイント練習を変えずに今まで持久力強化をメインとしていたペース走や閾値走などと入れ替えて行うのが良いです。
マラソンやハーフマラソンの場合、重要度がそこまで高くないため、今までの頻度を保つと良いです。
試合前(1ヶ月前~試合)
この期間では、高めたVO2max能力維持しながら調整することが重要です。
重要度の高い5000mは週に1回程度に抑えて疲労を抜きつつ、ジョグや閾値走などで仕上げていきましょう。
中距離などはVO2maxインターバルを2~3週に1度に落とし、閾値走や専門練習をメインとして取り組むことが重要です。
基礎構築期間(冬季等)
大会のない基礎構築期間では、計画や個人に合わせて変わります。
VO2max能力を仕上げることより土台が重要なので、以前紹介したジョグのみを行う練習期間の場合、インターバルを入れる必要はないでしょう。
ですが、試合がない期間がない方や、VO2max能力が課題の方などは課題に合わせて取り入れるなど、練習を組み立てていきましょう。
最後に
今回紹介した通り、VO2max能力向上のトレーニングはかなりきつい練習となります。インターバルのようなきつい練習を終えると効果だけでなく、達成感をとても感じられると思います。
タイムによって状態が分かりやすいので、更新していけるように頑張りましょう!
余談ですが、世界のトップランナーは若いうちに5000mなどのトラック種目に専念し、歳をとるにつれてマラソンに移行するのがメジャーになっています。実はVO2maxが多いに関係しています。
最初に述べたようにVO2max能力のピークは25歳程度と言われており、以降減少傾向にあります。そのため年齢が低い時にVO2max能力が重要な種目に取り組んでいます。
一方マラソンはVO2max能力は重要ではあるものの、中距離に比べ他の閾値能力など有酸素能力の重要性が高まります。有酸素能力や閾値能力は無限に高めることができると言われているため、それらの重要性の高いマラソンに切り替わっていきます。
現に、今年の2022ベルリンマラソンで37歳のエリウド・キプチョゲが自信が持つマラソンの世界記録を更新しました。
他にもベテランながら活躍するランナーは多くいます。それぞれの距離や個人の特性にあったアプローチ方法はさまざまです。
今回の記事はダニエルズのランニング・フォーミュラを参考に作成しました。メニューや練習の意図など、研究結果によりさらに深く学ぶことができます。もっと詳しく知りたい方はぜひ読んでください!
これからも役に立つ情報を発信していきます!記録更新に向けて自分に合ったトレーニングを探して頑張りましょう!
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